ヒトカタノオウ 感想
それは夏の夜の夢から始まった。
欠けてしまった夢の中で覚えているのは、ほんの僅かな幼い思い。
吊り橋が揺れる対岸で、真白の髪の彼女が寂しげに微笑んだ。
伝えなければいけない言葉を捜しているうちに、ふと目が覚めてしまう儚くも血に塗れた夢。
夢が意味することが何なのか、それすらもわからぬままに、主人公は夏の巡りを夢で知る。
ようようにして思い出せたのは、ミズハという少女の名前。
歪なその夢は、年月を重ねるごとに鮮明になっていた。
何も知らず、何もわからないまま、主人公は日々の日常を生きていた。
屋敷を取り仕切る咲月は相変わらずの様子で愛想もなし。
新しい家族の奈緒は世間知らずで恐いものなしで、少し危なっかしい。
少し普通とズレた、そんな日常の温かさ。
それが、いつまでも続く本当なのだと思っていた。
九天の空に鳴り響く花火の音は、在ったはずの日常の終わりを告げる。
辿り着いた夜の底で、主人公が見る色は誰の色なのか…
人と妖の戦いの最中へと主人公は足を踏み入れた。
静謐な森をただ歩く。
対なす橘の木を潜ればそこは影法師の集う幻(まほろば)の里。
繋いだ手はどこまでも離れずに、人と妖の狭間へ主人公は迷い込む。
★感想
アカシノクニとヲルノクニの2つの物語があり、妖サイドと八坂(人間)サイドのお話を読むことになる。
一言で言えば『エロゲ版もののけ姫』と言ったところ。
八坂も妖も黄泉にいるタタリ神を封印するという目的は一緒だが過去に八坂と妖との間に決裂することもあって10数年戦っている。
そんななかタタリ神の分身とも言うべきマガツヒが黄泉戸を潜り出てきてしまいという感じのお話である。
妖には妖の、人間には人間の理由や目的や考えがありどちらが悪いと言い難いものであった。
個人的には妖側の方が好きであった。
ただ、アカシノクニでのミズハは怖かった……
黄泉帰りしてマガツヒに操られてたせいではあるけれど……
普通に楽しめました。
伝記物や戦う女の子達が好きな方におすすめな1作でございます。