虚ノ少女 感想
★あらすじ
富山の山奥にある、「ヒンナサマ」と呼ばれる神を崇める人形集落。支那事変の最中という社会情勢の不穏さとは縁遠いこの集落で、土地の名家・雛神家の跡取り息子である少年・理人は仲間たちと退屈ながら平和な日々を過ごしていた。十数年ぶりに「ヒンナサマ」の使いである「天子」が現れ正式な祭が催されることになった年の冬、理人は親戚の祠草家に客として訪れた少女・砂月と出会い、いつしか恋仲となる。しかし砂月や仲間たちと祭を楽しんだ日の翌朝、集落の住民・川瀬幸子が吊るされた上に腹部に土人形を入れられた惨殺死体で発見され、住民たちは「ヒンナサマの祟り」であると噂した。非協力的な集落住民たちを前に警察の捜査が難航する中、今度は砂月が四肢を切断された死体となって発見され、呆然となる理人。まもなく太平洋戦争勃発によって捜査は打ち切りとなり、二つの殺人事件の真相は有耶無耶となってしまう。
時は流れて昭和32年12月、探偵・時坂玲人は、二年近く前に誘拐され行方不明のままの朽木冬子を探し続けていた。警察からの依頼で二件の「吊るした遺体の腹部に土人形を入れる殺人事件」の調査を開始した玲人は、第一の事件の容疑者であった男・真崎智之を助手として事件解明に乗り出す。玲人と智之は捜査を進める内、、古い因習にとりつかれた人々と、彼らに人生を翻弄された子供たちを巡る因縁に巻き込まれていく。
★感想
殻ノ少女の二部作目にあたります。
あらすじにもある通り今回の話は富山の山奥の村で起こった事件が主になっています。
それと同時に前作の「朽木冬子」と「間宮心爾」の行方を追っている形になっています。
富山の人形村で行われていた祭と祟り。
それが東京でも起きていた。
結果としては第2の主人公である理人の妹である花恋が起こしていたというもの。
双子である妹の花恋は理人に恋をしており、その嫉妬から婚約者を殺していたというものでした。
そしてその祭の天人である砂月は過去に理人といい関係になり子供を産んでいましたが砂月自身、上手く子供を育てる自信がなく某宗教団体が経営している養護施設に預けるのでした。それが朽木病院にいた未散であった。
預けた理由としては、砂月は過去に天人の影武者として生活しており本物の天人が理人に恋をしていたのに嫉妬をし、本物の天人を自分の中に取り入れようと殺害したものでした。
そして東京に逃げ、六識により人格矯正をしてもらい何とか生活できるようになっていたのです。
養子も向かい入れていた砂月。
その養子も未散と同じ養護施設にいた子であり、某宗教団体の巫女として向かい入れる人物でありました。
その養子である雪子。
砂月と同様、他人を傷つけ自分の中に取り入れようとする人だったのです。
主な事件だったものの結末はこんな感じでありました。
そして、冬子行方不明事件にもこの宗教団体に嘱託医として働いており理人の幼なじみであった「黒矢尚織」と同じ村で生活していてその村の病院の看護師をしていた「沢城菜々子」が関係していたことも明らかになります。
昔、人形村の時から実の父やそのお客さんから性暴力を受けていた沢城菜々子と以前から仲の良かった黒矢尚織が東京で出会い生活をしていくのですが、沢城菜々子は過去の性暴力により子供が産めなかった。
そして、どこからか赤ちゃんを拾ってきた黒矢尚織。
最終的に父親殺害の容疑で沢城菜々子は逮捕されるわけですが、赤ちゃんと一緒に黒矢尚織は逃亡していた。
その場所は理人の父親が経営している雛神製薬が保養所に逃げたのではとの事でした。
その場所は偶然にも朽木冬子と間宮心爾が逃げていた場所でもありそこで2人を殺害、赤ちゃんを拾ってた場所でもあったのです。
その建物の横には朽木冬子と間宮心爾と沢城菜々子の父の白骨遺体があったのでした。
こんな感じのお話しでありました。
このお話では「自分らしさとは」というものがキーでもあったように感じられました。
特に砂月や雪子が誰かを取り込んで自分の1部にするというお話。
中々自分らしさというものが見いだせず他人の性格を真似るではないですが、自分らしさが分からず他人の真似をする。
もちろんそれ自体は悪いことではない(今回の話では人を傷つけたので別ですが)とは思う。
しかし、果たしてそれは本当に自分なのかというのは思うがこういう考え方もあったりする。
“他の人から影響を受けたことを自分に取り込んで自分の性格を形成していく”
誰しも人と生活をして何かしら影響を受けて生きていくものであると個人的には思うのですが、そういった人との触れ合いや環境などにより性格というのが形成されていくのかなぁと。
そのやり方がたまたま雪子と砂月は不器用だったように思う。
そして終盤に紫が雪子に「それでも雪子は雪子ですから」というセリフ。
不器用で人の真似とかをしてきたけれどそれ自身雪子でありそんな雪子が好きだったのかと思ったり。
自分では気づかないけど他人から見たらいい所は沢山あるようにも感じられました。
そして、今回も色々パラノイアに囚われてしまってるキャラクター達が多かったようにも思いますが誰しもが些細なきっかけによってパラノイアに囚われてしまうものなのだと改めて痛感致しました。